瓦版コンテスト

会社の人が増えて大きく変わったのは、テストや課題が増えたということだ。俺が入社した頃は、いろいろなことが原則として数値化されていなかった。しかし今では点数や順位がある。俺は、常に平均点付近をうろうろしている。最下位やら1位やら。割れば平均的な結果になる。上司は、常に上位。

たしか、先月の15日か16日に新しい課題が発表された。締め切りは24日。

今回の課題の面白いところは、一石二鳥の側面を持っていることだった。たとえば単純な筆記試験の場合、作られた試験は流用できるかもしれないけれど、試験を受けた時間は直接的な利益につながらない。

しかし、今回は違った。

課題を考えた方は、月に○○本の瓦版をつくるというノルマを抱えていた。黒い羊の瓦版である。新種が出たときにはクライアントにいち早く伝えねばならないし、動きがなくても何かを作らねばならない。大変な作業だと思う。

彼はいった。

「みんなで瓦版を作ろうぜ!」

瓦版コンテストの開催である。なるほどと感心した。知識がなくては瓦版は作れないし、画像加工のセンスや文章能力をみることもできる。何より、彼は集まった瓦版を使うことで、ノルマを達成することができる。元気玉のような課題だと思った。

是非参加したいところだったが、俺は課題を捨てるか否かを選択せねばならなかった。俺だけが忙しいわけではないけれど、一ヶ月の中で最も身動きが取れない時期と作成期限が完全に重なっている。ただし、この会社では「時間が足りない」が理由にならない。社長曰く「能力が足りない」のだ。課題の評価は賞与に直接響く。が、俺は今回賞与のことは半ば諦めていた。1月は道に迷って報告会議を飛ばし、3月は3時間遅刻し(社長からの偶然の電話がなかったら検査自体が飛んでいた)、6月は週に2回遅刻した。

俺は捨てた。課題より報告書。

親方とNさんと俺の3人で、報告書に取り掛かる。3人掛かりでも重い。Nさんがいう。「これ、ひとりでやっていたんですか?」「そういうときもありました」「無理ですよ……」

そして、社長からの評価は決して高くなかったが、なんとか6月も乗り切った。

24日、車の中で親方がいう。「課題の締め切り何時だっけ」「19時です」「会社に戻って18時。ワンチャンスあるな」「1時間……」

本来であれば3時間くらい掛かる作業だった。もっと掛けてくるひともいるだろう。もっと掛からないひともいるだろう。発案者であれば、おそらく30分くらい。

19時ジャストに提出した。印刷してみる。……これは。俺のは特にひどい出来だった。作成者が伏せられた状態で投票する。それぞれが1位から3位までの瓦版を選ぶ。自分への投票も可。「まずいのに投票したら減点とかないですよね」「ありうる」俺は良いと思うものを選んだ。自分の瓦版は真っ先に除外した。

先日、結果が出た。俺が投票した瓦版は、2位、3位、5位だったと思う。

「なんだこれ」
「社長も投票している……」

社長も、誰が作ったのかわからない状態で票をいれていた。そして、社長だけが俺の瓦版に票をいれてくれた。寸評に「なんか汚い!!」と書いてあって吹いた。