「嫌なものを嫌と言っていたら、こんな今日に流れ着いた」

今の会社に入ったとき、従業員の数は24人だった。あれから10年経った。今いるのは64人。おおよそ2.5倍に増えた計算となる。

様々な理由で辞めていった人がいる。数日でいなくなったり、俺の出張中に入社して戻った頃には辞めていたり。退職者名簿をみると、半分以上の人の顔を思い出すことができなかった。名簿によれば、俺が入社してから今日まで辞めた人の数は92人。

先日、年に一度の全体会議があった。全国の社員が集まる日は、この日だけである。

勤続10年の表彰をされた。今までは現金が渡されていたが、今年からペリカ支給となった。もちろん、これは比喩である。単位はペリカじゃない。カイジか。どうしてこうなった。社長が仮想通貨の流行に影響を受けた可能性はある。厳密には違うけれど、印刷されたオリジナル紙幣には、一枚一枚社印が押されていた。結構な手間だったはずだ。

うまくいかないことの方が多かった。自他共に認めている。同僚が俺をどのように思っているか、すべてではないけれど、分かっているつもりだ。上司に守られていることも、自覚している。

社長からお祝いの言葉をもらい、一つの区切りがついた気がした。けれど、終わっていない。もう少しだけ、やってみようと思う。まだ終わっていない。もうちょっと、きっと、ここでやりたいことが俺にはあるはずだ。