「何度消えてしまっても、砂の城を僕は君と残すだろう」

12月10日、友人のMに言った。
「今回の件、俺は首を突っ込まないことにした」
Mからは「私も」という返事。彼女は、ああ、そうだと続けた。

「私もきみに言いたいことがあったんだ。課題図書を交換しない? 本を読んでいたらきみに合いそうだと感じた。送る。でもそれだったら、きみからも何かお薦めを教えてもらおうと思って」

俺のことを覚えておいてほしいとは思わないけれど、何かをしていて俺のことを思ってくれたのだとしたら、それはとても幸運なことだ。俺も、見上げた月が細いとMのことを思い出す。猫の爪、俺じゃなくて彼女が使った言葉。少し考えてから正直に話した。

「互いに本を送り合うという行為は、とても瑞々しいものだと思う。俺の提案は『未来に訪れる瑞々しさ』を放棄するものになってしまうかもしれない。けれど、お互い、タイトルを伝えるに留める形はどうだろう? 俺、あんまり家にいないから本一冊受け取るのも難しくて」

Mは「うん。そうしよう。何か思いついたら教えてね」と。あれから1ヶ月。「これかな?」と思いついた本が二冊ほどあったけれど、読んだのはだいぶん昔のことで、彼女に薦めたいのかどうか確信が持てない。だから、もう一度読んでみようと思う。