どうして格好いいのか、しばらく経って気がついた。

そうか、全ての字に月が入っているんだ。厳密には違うかもしれないけれど、でも。
カッコいいという印象が先にあり、理由は後からやってきた。

北陸勤務のN氏のことを、同僚は親愛の情を込めてオジキと呼ぶ。なかなかもって、言い得て妙だなあと感心する。
かつてのボスは、親方だった。親方は転職し、あちこち飛び回っているらしいが、拠点に変わりはないらしく。
ちょっと前にも、社宅にあらわれたらしい。

「社宅を変える予定がある。君の荷物がいくつかある。片付けに来い」

オジキに呼ばれた。二年ぶりの北陸出張だった。

ご飯をご馳走になり「北陸においでよ。もう一回、一緒にやろう」と言われた。
「ねえ、もしかして」「ん?」「待っていてくれたの?」「まあ、そうなるかな」

「……社宅の片付けって」
「あんなん、君と話すための口実に決まってるだろうが」
「だ、騙したな!!」

何かが違えば、一緒に仕事をしていたのかもしれない。けれど、何かが違わなかったから、一緒に働くことはなかった。
「常駐は厳しいと思うけれど。半分なら付き合う。前に、約束したし」
「ん」
「でも、俺がこっちきたら、Nさんはヨソに行くんでしょう。そんな気がするよ」