「ペットボトルが山盛りならば」
「深爪さんの部屋が綺麗だったら転がり込んでいたのに」
友達の冗談に俺は応える。
「俺のことを信じてくれるのはありがたいけれど、余計にこじれるんじゃないか」
部屋が汚い。病的に汚い。ゴミの地層こそ形成していないものの、ゴミとゴミじゃないものが混然一体となっている。いつだったか「それはたぶん全部ゴミだよ」と越川くんに言われた。たしかに、その通りかもしれない。
部屋が汚いことを友達は知っている。彼らが部屋に訪れることを俺が本当に嫌がっていることも知っている。年末に大掃除をやろうと思っていた。やらなかった。さぼったのだ。
最後に布団を干したのはいつだろう。床を拭いたのは。思い出せなかった。
友達の冗談について考える。
彼女が俺の部屋に来ることはきっとないだろう。だけれども。
「逃げ場所がないというのはしんどいもんだ。掃除しておくから好きなときに使っていいよ。俺がいなくてもいい」
俺はそこにいない方がいい。こっちは、言わなかった。
そんなわけで掃除を始めた。5月1日を締め切りに設定している。メーデー、メーデー。冗談です。俺は助けを求めていないし、シュプレヒコールにも興味がない。一度の掃除で45リットルのゴミ袋が二つずつ出来上がっている。
掃除が終わったら、きっと友達に伝えよう。
「部屋は片付いたけれど、エアコンは壊れているよ」