「納めましょう妄想税、皆様の暮らしを豊かにするために」

三週間ほどの出張で関東を離れている。一週間単位の出張はよくあることだけれど、ぶち抜きは珍しい。スケジューラーが気を遣ってくれているということもある。「週末、帰ってきてもいいよ」上司に言われた俺は「経費がもったいないので」と答えた。半分は会社の都合、もう半分は俺の都合である。

一週目は大阪。月曜から金曜まで働いて土日休み。土曜を大阪で過ごし、日曜日に移動した。土曜日、大阪で人と会い、少々不愉快な思いをした。それはまた別の話で、何が不愉快だったのか、俺は二週間ぼんやり考えることになる。自分なりの結論は出て、すっきりした。
二週目は九州。月曜から土曜日まで働いた。三週目は再び大阪である。本当は、休日の日曜日に移動するつもりだった。「日曜に移動するんですか? 俺も日曜休みだから、一緒に飲みましょう」同じ出張組の後輩が誘ってくれたということだけが理由ではないが、結局、俺は二週目の日曜日を福岡で過ごした。酒を飲みながら後輩とモンスターストライクで遊ぶ。これもまた別の話であるが、俺は、比較的このゲームを真剣にやっている。後輩は、ゲームの上では先輩にあたる。

我々が勤める会社には、アニメ好きが何人かいる。九州に所属するYは、我が社で三本の指に入るアニメ好きである。Yと同じチームになった日は、車での移動中、主にアニメの話をしていた。片道二時間ならば往復で四時間。Yが運転し、俺は助手席に、他の同僚は後部座席に。車とYの携帯電話はトランスミッターでつながっている。彼の好きな音楽が流れ続ける。気になる歌があった。おそらく、知らない人だった。歌詞を聴き取り、検索する。曲名が分かった。

「この歌は?」
エルドライブのオープニングテーマですね」

アルバムを一枚、iTunesで買い、一週間、彼女の歌を聴いている。今、一番好きな曲をYに伝えた。ボーカロイドのカバーらしい。Yから返信があった。そうなんだよ、俺もそう思うよ。

そういえば、と気がついた。

「どういう人が好きなんですか?」何週間か前にそう質問されて、俺は答えることができなかった。一応の回答が見つかった。確信はないし、全部ではなく一部であるような気もするが。今度会ったら伝えようと思う。

明日、関東に戻る。