「幸せな妄想を描いては打ち消して」

ギターのピックを、俺は二種類しか知らない。二本以上の指でつまむものと、親指にはめるものだ。
前者の場合、コード弾きにせよアルペジオにせよ、ピッキングによって弾くものだと思っていた。思い込んでいた。指で弾きたいなら後者を選ぶか、あるいは前者のピックを口にくわえる等して指を自由にするか、しかないと。エアーピック奏法という冗談を以前口にしたことがあるが、その話はまた別の機会に。

弾いてみたい曲はたくさんあって、その一つを演奏している動画をみていた。同じようには弾けないけれど、コードの移り変わりがよく分からなくて、みていた。
「そんなことができるのか」と感心した。

その人は親指と人指し指でピックをつまみ、中指、薬指、小指で指弾きしていた。確かに可能だ。どうして思いつかなかったのだろう。

理由は簡単だ。思い込んでいたからである。

昨年、友達に「何か一緒にやりたいね」と誘われて、真剣に考えたけれど実現しなかった。「ごめんね、約束守れなかった」俺が謝ると、友達は「もしやってたら、俺も寝る時間がなかったよ」と笑った。それも分かっていた。起業したばかりの友達が忙しいということを知っていたから。

だけれど、いつか。そう思っている。

技術とセンス、どちらも敵わないけれど、だけれど、一緒にやることを想像すると、楽しそうだ。彼は、ベースを弾く。誰にタンバリンを任せるかも、もう決まっている。

きっと楽しいから、練習しようと思う。