犬の足跡 世界地図

ここ数日からだのあちらこちらに腫れがあり今年も虫に刺される季節がきたのだと感じていた。特に左の腕がひどい。出たり消えたりを繰り返していた。虫刺されではなくあせもだろうか。
５日の夜、明らかに虫刺されとは思えないような腫れになった。これはおかしい。台地のようになっている。狭いところで１０円玉くらい広いところだとハンバーガーを横からみたくらい。
家に帰ってから水を浴びた。腫れも痒みも消えなかった。腫れたら冷やせばよいと思っているわけでもないけれど病院が開くまでの一時間をどうにか誤魔化したかった。屋上に溜めているのだろうか、シャワーの水はちっとも冷たくならなかった。
掻いちゃ駄目だ掻いちゃ駄目だ。世界地図のように腫れた左腕や両脇、背中、太ももを強くさすった。右腕に犬の足跡にみえる腫れがある。痛みよりも痒みの方が辛いと誰かが言った。そう言われるとそのような気がしてくる。しかし痒い。目がゴロゴロした時には取り出して洗ってしまいたい欲求に駆られる。今回は、神経を取り外して冷凍庫にしまいたいと思った。
８時くらいに家を出た。かかりつけ医を推奨する制度があることを知った。かかりつけ医からの紹介状があると初診時選定療養費というものが発生しないらしい。深く調べていないけれど良い制度であるように思えた。

◇

「ジンマシンですね。熱はありますか」

「たぶんないです」

先生は黙って体温計を取り出した。

「いくつかお聞きしたいことが」
「はい」
「人にうつりますか」
「うつらないですよ。大丈夫」
「土曜日に踊ろうと思うんですが問題ないでしょうか」
「激しい運動はちょっと……ひどくなる可能性があります」

処方された薬を飲んで２日目。７割のジンマシンが消えた。

処方された薬はアレルギーを抑えるものなので、落ち着いたらアレルギーの原因を調べてもらおうと思う。