「手を振った君がなんか、大人になってしまうんだ」

これは、もはや呪いみたいなものじゃないか。

 ◇

 吸っている煙草のパッケージが変わった。幾度となく見た目が変わってきた銘柄ではあるけれど、今回の変更は、ちょっとあまり、好きではない。気持ち悪いというか落ち着かないというか。馴れるのかな。

 煙草を変えるかもしれない。

 そういえばと考える。彼が吸っていた煙草はなんだっけ。小説の登場人物だ。ひとりは思い出せる。たぶん合っている。念のため調べてみた。やはり合っていた。ラクダ。もうひとりは、と考えてみる。思い出せなかった。調べた。

 俺が今吸っている煙草だった。偶然ではない。俺は彼の影響でこの煙草を吸い始めた。だいぶ恥ずかしい。彼のように頭の良い人にはなれなかった、彼のように優しくもなれなかった。だけれど、きっと俺は彼に憧れてこの煙草を吸い始めたのだ。これは、恥ずかしいぞ。何度でもいう。恥ずかしい。そうか、そうだったのか。すっかり忘れていた。なんだか呪いみたいだな。そんなふうに思った。

 ◇

 友達との約束を果たした。ついでに、俺の考えを伝えた。俺は彼がどのように考えているのか分からない。話を聞いたところで、おそらく教えてはくれないだろう。もしくは、彼も分かっていないんだろう。彼と俺が違う人間であるということは分かっている。だから俺の考えを当てはめたところであまり意味はない。それでも。分からないなら分からないなりに考えてみるしかないじゃないか。下手の考え、休むに似たり。休め休め、休んでおけ。ニタリ。俺、ニタリという表現を使ったことがないな、たぶん。

 「前にも言ったけど、それはふたりでやった方がいいと思う」

「ミックスよろしくです」

「俺は、関わらない方がいいと思うんだ」

 分からない。答え合わせもできない。俺だったら。彼が俺なら「まぜて!」と思ったんじゃない。彼は我々とやりたかったんじゃない。君とやりたかったんだ。だから、そこには俺がいない方がいい。

 「パソコンない!」

「貸すよ」

「使い方分からない!」

「教える」

 前にも書いた。意地悪をしたいんじゃない。それが、一番良いと思ったんだ。実はこのパソコン、それなりに大切に思っているんだ。友達から預かっているギターと同じくらいには。でも君ならいいよ。貸すよ。

地の文を、俺は彼女に話していない。俺は、そんなに話すのが得意な方じゃないし、どうだろう、もしかしたら話したくないのかな。

 

友達を家まで送り「それではね」と言う。さよなら。